学芸員の覚書(小さいアメリカンなオス)
学芸員の覚書(小さいアメリカンなオス)
日本に生息しているカブトガニのオスは,全長約50cmが一般的です。
それでも大小の差はあり,過去に笠岡で捕獲された118個体を調べところ
最大で595mm。
最小で370mmでした。
最大の個体と比較して最小の個体は約62%の大きさなので,「かなりの差があるなぁ~」というのが正直な印象ですが,平均サイズの50cmと比較すると74%。
それでも,個体差は大きい印象です。
が,しかし!
当館で飼育しているアメリカカブトガニが比較にならないほど小さいオスに脱皮してしまったので,ここにご紹介します!
とにかく見てほしいんだ
この写真は果敢にもカブトガニのオスに乗り上げるアメリカカブトガニのオス。
どれくらい小さいかというと,このアメリカカブトガニは前体幅がソフトボールくらい。
全長約22cmです。
アメリカカブトガニは成体の大きさに関しては,個体差が大きいことは有名な話なのですが,オスの平均全長は約35cmだそう。
つまり,平均サイズと比較しても約63%の大きさなんです。
大きなアメリカカブトガニと比較すると半分以下のサイズです。
それでもオスの特徴が
カブトガニは最後の脱皮をすると,オスかメスの特徴が見てとれるようになります。
アメリカカブトガニのオスは,第一歩脚の先端が「把持器(はじき:クラスパー)」と呼ばれる形状に変化します。
この脚でメスを「ガシッ!」と捕まえてつがいになるわけです。
ちなみに,アジアに生息する3種のカブトガニはこのクラスパーが第一歩脚と第二歩脚の両方に変化します。
↓日本にも生息するカブトガニのオス↓
そして,このアメリカカブトガニのクラスパーをよ~く見てみると,小さなハサミの名残が見られます。
つがいになると,けっこうな強さではさむので,クラスパーのこの部分はポキッと折れてしまいます。
今だけの貴重な写真です。
アメリカカブトガニと違って長いハサミが印象的です。
ちなみにこちらが,今回紹介したオスの最後の脱皮殻。
第一歩脚が普通のハサミ状であることがわかります。
このアメリカカブトガニは館内の水槽で展示中ですが,普段はよく潜っているので観察は難しそう...。
運がよければ動いているかも!
見られた際は,小さくても立派にオスになったアメリカカブトガニを観察してみてください!