学芸員の覚書(小棘)
学芸員の覚書 (小棘)
カブトガニの体は大きく分けると「前体」「後体」「尾剣」の3パーツに分かれます。
一番上の写真はそのうちの「尾剣」。
では,「小棘(しょうきょく)」って何?
お気づきの方も多いと思いますが,尾剣の上と横に生えたトゲトゲが「小棘」です。
今回紹介するカブトガニのマニアックな部位「小棘」
尾剣を真上から撮影したものですが,鋭いトゲが密に並んでいます。
小さなカブトガニには,この小棘はありません。
亜成体(おとなになる少し前)の個体や成体(おとな)になると生えてきますが,用途はよくわかりません。
顕微鏡で拡大すると,大きいもので約2mmあります。
これが指などに刺さると,鉛筆の芯が刺さった時のように皮下にずっと残って,痛い思いをします。
ですが,生え際が意外と頑丈で,指に刺さって残ることは稀です。
切り傷になるほうが多いのです。
ところでこの小棘。
尾剣以外の意外なところにも生えています。
体のふち?
眼の上?
よ~く見ると分かるのですが,「体の上方」です。
前体の上側,後体の上側です。
分かりやすい写真を載せます。
かなりトゲだらけです。
ツルンっと丸いイメージが強いカブトガニですが,じっくり観察するとどこもかしこもトゲだらけなんです!
しかし,一般的(?)に「小棘」というと,このような背中から生える小さなトゲを小棘と呼ぶことが多いです。
カブトガニ博物館へご来館の際は,ぜひ,水槽内のカブトガニや標本などで観察してみてください。
小棘が多いカブトガニや少ないカブトガニなど様々です。
(上の写真は標準的なメス)
ちなみに,カブトガニは成体になると脱皮をしません。
そして,小棘は生活するうちに少しずつ抜けたり,折れたりしていきます。
「このカブトガニは,尾剣の小棘が前方1/2程度もあるね。成体になってからまだ若い個体だ。」
なんて会話が聞こえたら,その人はきっとカブトガニ通!