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カブトガニ教養講座3

印刷用ページを表示する更新日:2011年3月1日更新 <外部リンク>

カブトガニクイズ3

17.恐竜は滅亡したのになぜカブトガ二は生き残ったのでしょうか ?

この質問に対する解答には非常に難しい点があります。というのは、今もって恐竜の絶滅原因は多くの謎に包まれているからです。恐竜が絶滅した原因については、気候変化やアルカロイド中毒説・伝染病説・種の寿命説あるいは巨大隕石衝突説など、多くの説があります。以下は真の原因が気温の低下による環境変化によって、恐竜などが滅びたと仮定します。

白亜紀において滅亡した生物は、恐竜の外、アンモナイトや海棲爬虫類など、比較的活動的で食物連鎖の頂点に立つものが多くいます。つまり、寒冷下によって餌が欠乏し、絶滅を余儀なくされたものと考えられます。また仮に餌があり、恐竜が温血動物であったとしても、熱帯や亜熱帯の気候下に適応していた彼らには、もはや寒さから身を守る手段がなかったことが推測されます。

逆にこの時期を生き延びたカメやワニなどの爬虫類、あるいは小型の哺乳類はどうでしょうか。ワニなどの爬虫類は、恐竜などと比べて、極めて僅かの餌で長期間を生き延びることができる生物と考えられます。哺乳類についても、初期のものはネズミのように小さなものであったから餌も少量で済んだはずであり、寒さに対しても体毛、あるいは冬眠という手段によって身を守ったと推察されます。

白亜紀の海においては、中生代特有のイノセラムスやトリゴニアなどの貝類が大盛を極めていましたが、このころになると新しいタイプの二枚貝や肉食性の巻貝が出現します。二枚貝は、よく発達した水管を持っているため、天敵の少ない泥の中へ身を潜めて生活することができ、肉食性巻貝はじょうぶな卵黄で幼生を保護することができました。このように新しいタイプの貝類は、これまでの多産的なものから保護的な生殖へと変わることによって、白亜紀はおろか現在まで生き延びています。

カブトガニは保護生殖的な動物で、たとえば幼生期においては干潟に生息し、泥中で生活することによって外敵から身を守っています。また卵はある程度の乾燥にも耐え、しかも卵膜によって胚体を保護しています。これらのことは、二枚貝等の保護生殖と同じであり、もし貝類がこういった理由によって白亜紀末を生き抜いたのであれば、カブトガニにも同様の解釈が成り立ちます。

またカブトガニの成体について考察してみると、成体あるいは幼生は気温の低下によって休眠状態にはいることができ、この間は餌も捕りません。したがって白亜紀末の気温の低下は、カブトガニにとって、別に労することなく、乗り切ることができたのではないでしょうか、さらに海退現象に対しても、カブトガニは鰓書さえ濡れていれば、一時的に海中外でも生きることができます。そのため魚などのように、水がなければすぐに死に至るというのではなく、隣りの水のあるところへ移動するぐらいのことはやってのけたことが予想されます。

このように急激な変化でなければ、カブトガニは十分に適応できる能力を持っています。カブトガニがあまり進化も遂げずに、しかも白亜紀末を生き延びてこられたのは、彼らが狭い範囲のみに適応していたのではなく、広く環境に適した生活スタイルを身につけていたからです。

18.恐竜はカブトガニを食べていたのでしょうか ?

ゾルンホーヘンではカブトガニ類を始め、始祖鳥、翼竜類、小型恐竜のコンプソグナツス類、ムカシトカゲ類、アンモナイト類、魚類など多数の化石を産しており、このひとつの区域から見い出された動物化石から見ても、カブトガニと恐竜は比較的近隣に生息していたものと推察されます。特に潮の引いた干潟においては、恐竜とカブトガニの出会いがあったはずであり、そこでは弱肉強食の関係が成り立っていたと考えられます。

化石からはカブトガニが恐竜に食べられたという痕跡は見つかっていませんが、当時の環境を考えれば、干潟には相当数のカブトガニが生息していたことは十分に考えられるし、これまでに発見されたカブトガニの化石数からみても、恐竜などの捕食者に対して重要なタンパク源になっていた可能性は高いと思われます。

19.生きている化石とはどういう意味ですか ?

「生きている化石」という言葉の意味は、地質時代においてなんらかの形で栄えていた生物が次第に衰退し、現在においてはその子孫がほそぼそと生きつづけている系統の生物に対する俗称であり、科学的には「遺存種」(relic)といわれます。

アメリカの古生物学者であるシンプソン(G.C Sinpson)は、遺存種について次の五つに分類しています。

  1. 数量的遺存種
    かつてはその個体数が多かったが、現在ではその数が減少してしまったもの。たとえば、ヨーロッパや北アメリカの野牛のようなもの。
  2. 地理的遺存種
    その生物の祖先や類縁種がかつては広い地域に分布していたが、現在は限られた地域にだけ分布しているもの。たとえば日本や中国で見られるイチョウのようなもの。
  3. 系統的遺存種
    地質時代から、極めて僅かしか進化しなかったもの。たとえば、シャミセンガイやカブトガニなど。
  4. 分類的遺存種
    かつては多くの類縁種をもっていたが、現在では類縁種が少なくなったもの。たとえばサイやゾウなど。
  5. 環境的遺存種
    昔の生活環境に適応した形質を新しい環境でも残しているもの。たとえばパイカル湖のアザラシのようなもの。

本来多くの遺存種はシンプソンの定義にいくつかまたがったかたちになっており、単純には分類されません。 これら遺存種は地質時代の生物を研究する上で化石には残りにくい組織の構造や生態などを比較研究することができます。
「生きている化石」とは、語ることのない化石の代弁者なのです。

20.カブトガニは食べられるのでしょうか ?

日本においては、現在はほとんどカブトガニを食べていないようですが、戦後の食料難の折はよく食べていたようです。現在でもカブトガニを食べたという人の話や、カブトガニ料理を食べさせてもらえるという話を聞くことがあります。しかしその味を食べたという方々の意見を聞いたところ、一つは非常に油っこく、臭みが強いため、食用には不向きという意見もあればカニのように美味しいという意見もあります。

中国や台湾において食べられるカブトガニは、日本と同種のものですが、タイには、マルオカブトガ二とミナミカブトガニの 2種が棲んでいて、マルオカブトガニは稀に毒をもつものがあり、それを知らずに食べれば死に至ります。

近年カブトガニの食文化に対して、一つの大きな波が訪れています。東南アジアにおいても我が国と同様に開発が進んでおりカブトガニの生息できる海は、年々狭められ、それと平行してカブトガニも減少しています。そのため一般に食べられていたカブトガニも高級料理化し、なかなか庶民の口には入らなくなっているそうです。

21.カブトガニはどんな俗名があるのでしょうか ?

カブトガニには各生息地域によって以下のようなそれぞれ違った呼び方があります。 岡山県「どんがめ」、広島県「だんがめ」、徳島県「びぜんがに」、愛媛県「かめごうら」「がわら」、福岡県や佐賀県などでは「はちがめ」、「がめ」、「うんきゅう」、大分県「うんぺこ」、「はちがんす」。

海外のカブトガニについての俗名は(Horseshoe crab)、(Kingcrab)などがあげられます。国内も海外も含めてカブトガニの呼び方には 2つの共通点が見い出せます。1つはカブトガニをカニの仲間と考えている点で分類学上その位置付けが、甲殻類かクモ類か随分論議されたところでもあります。もう一つの共通点はカブトガニの形状から連想して、カメや鉢、馬蹄といった類いです。

このように俗名で、しかも身近かなものにたとえられていたカブトガニは、生息する地方においては、一般的な動物として、人々の生活の中に息衝いていたのでしょう。

22.カブトエビはカブトガニの仲間ですか ?

カブトエビ
(写真はカブトエビ)

カブトエビはカブトガニと形状がよく似ており、田んぼの中でよく見かける生物です。

カブトエビはカブトガニと違って、エビやカニの仲間の甲殻類に属しています。その発生は古く、カンブリア紀中期のパージェス頁岩(けつかん)中(カナダのブリティシュ・コロンビア州のステフェン山に露出している。)からは、その類いのものが化石として発見されています。現存種は大部分が淡水性であるが、カブトガニと同様に古い形態を残していることから、「生きている化石」として分類されています。

たしかにカブトエビとカブトガニは、よく似た形をしています。これは 2種とも違った生物でありながらよく似た生活スタイルをとっているためでしょう。

23.カブトガニに寄生する動物はいますか ?

カブトガニに寄生する動物ですが、まず甲殻の表面に付着するフジツボが挙げられます。このフジツボは、主に雌よりも雄に多く付いています。これは抱合体勢において、雄の体が雌よりも泥の外にあるためです。
カブトガニに寄生するフジツボ
(写真はカブトガニに寄生するフジツボ)

また、アメリカカブトガニには、ウチムラサキがよく寄生しているのが見られます。

体長が 4~6mmしかなく、体は柳葉状をしているプラナリアの仲間のカブトガニウズムシもカブトガニに寄生します。腹側の特に歩脚の裏側や鰓脚などをよく見ると乳白色のものが、たくさん蠢いています。この外動物ではありませんが付着珪藻などもその類いのものです。

24.カブトガ二の奇形について教えて下さい。 

カブトガニの奇形は、特に発生段階において比較的多く見られます。奇形の中で比較的よく見られるのが、後体の欠損や脚の数が少ないもの、あるいはシャム双生児的なものがあります。これらは稀に成長した個体を見かけることもありますが、ほとんど孵化することなく死んでしまいます。他に後体から二本の尾剣がある個体や、体形的にも完全な雌であり、体内にも多くの卵が認められるが、生殖口をもっていない雌のカブトガニの個体などの奇形の事例もあります。
奇形の原因についてですが外部からの影響によって体を損傷し、脱皮によって治癒する時に引き起こされる形の変形と水質汚染が原因と見られる奇形の 2通りの考え方があります。水質汚染が原因と見られる奇形は特に発生段階においての影響力は強いものと思われます。汚染と奇形には何らかの密接な関係があることは事実で、汚染度の高いところほど奇形率も高くなっています。