学芸員の覚書(縁棘)
学芸員の覚書(縁棘)
縁棘は,「えんぎょく」と読みます。
カブトガニの仲間にしかない部位なので,日常会話で使うことはまずないですし,知っている人も少ないと思います。
どこかというと,体の後ろのトゲトゲです。
何のための器官かというと,防御の役割や干潟で泥に体が沈んで埋まらないためといわれています。
2021年6月29日,1匹のカブトガニが漁業関係者の網にかかりました。
それがこのカブトガニ。
縁棘をアップで。
じつはこの縁棘,オスかメスを判断する時にも重要な部分です。
メスは3本が長く,残りの3本は短くなっています。
一方オスは,6本とも長いことが特徴です。
しかし!
今回捕れたカブトガニは,左側の5番目が短く,右側にいたっては5本しかありません。
オスかメスかどっち??
そんなふうに思うかもしれませんが,カブトガニのオスとメスの見分けるポイントは他にもありますので,それを見るとすぐにわかります。
「男(オス)はつらいよ」のページでも紹介しています。
でも,メスの縁棘は上の写真のようにはまずならないので,見慣れるとオスだということが誰でもわかるようになります。
さて,今回捕れたオスのカブトガニの縁棘。
もう少しアップで観察してみましょう。
左側の5本目は,どういうわけか短小になっています。
右側の6本目は,生え際さえないことがわかります。
「こんなにトゲが足りなく大丈夫なの!?」
と思うかもしれませんが,じつは,この縁棘の本数の違いや長さの違いというのは,よくあることです。
一言でいうと「個性」でしょうか。
このページの上の方で,縁棘の部位を説明している写真のカブトガニも右の縁棘が5本しかありませんね。
さらに,左の3本目は短くなっています。
この縁棘以外にも,よ~く観察してみると,個体によって所々違う部位があります。
このカブトガニでいうと,全体を上から撮った写真を見るとわかりますが,標準的なカブトガニより尾剣(びけん:しっぽ)が少し短いことも特徴の一つです。
博物館の水槽でカブトガニを見るときは,縁棘にも注目して見ると,個性を見つけられるかもしれません。
みんな違って,みんないい!