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カブトガニ教養講座1

印刷用ページを表示する更新日:2011年3月1日更新 <外部リンク>

カブトガニクイズ1

1.カブトガ二はどのような泳ぎ方をするのでしょうか ?

カブトガニの形状は、干潟で生活するために適応したものとなっていますが、遊泳に関しては流線型をした魚のように達者ではありません。
泳ぐ時は主に水面近くを仰むけになって背泳ぎをします。カブトガニの甲殻は、腹面が大きく窪んだお椀形をしており、仰むけになると浮力を得やすく安定した泳ぎ方ができます。前へ進むための推進力は鰓脚をあおることによって得ることができ、通常の呼吸時よりも強く一定のリズムをもって、水を後方へ蹴りながら前へと進みます。泳ぐ方向については、這う時と同様、尾剣を左右に動かすことで舵を取っています。 
泳ぎは小さな幼生ほどよくおこないます。成体は、ごく稀に観察される程度で、抱合体勢にある場合は雌雄がそのままつがって泳いでいることがあります。

2.カブトガ二の泳ぐ速度はどの位でしょうか ?

カブトガニは一般的には鈍速ですが、水中では人間よりも機敏に活動することができます。カブトガニの泳ぐ速度ですが、これは泳ぎ方や個体の大きさ、潮流によっても大きく左右されますので正確な速度を計ることは困難です。
7齢幼生を使用した水槽内の実験ではわずかに0.4ノット(時速 0.798km)でした。

3.カブトガ二はどのような場所で観察することができますか ?

カブトガニは、瀬戸内海と九州北部に生息していますが、その範囲内であればどこでも生息しているわけではありません。生息するには以下のような条件を満たされなければなりません。

  1. 内湾性であること。 
    カブトガニは本来浅海に生息する動物であるため、波の穏やかなところでなければ、生息はおろか産卵することもできません。
  2. 干潮時に広大な干潟ができ、それに隣接した砂浜があること。
  3. 生息地の近辺に河川がある。
    カブトガニは汽水域(海水と淡水が混ざり、塩分が少ない水域)を好むようです。河口から1kmもの上流で産卵した記録や孵化実験において、かなり塩分濃度の低い状態でも孵化している点から、汽水域はカブトガニにとって、必要な生息環境の一つであると思われます。
  4. 干潟に生息する生物が豊富なこと。 
    カブトガニの餌となる二枚貝やゴカイなどの環形動物が繁殖し、アマモのような海草類が繁茂していれば、酸素に富んだ最良の生息地です。

泥の上に残された這い後
(写真は泥の上に残された這い跡)
 
カブトガニの幼生は干潟の「みお筋」と呼ばれる小川やタイドプールという水溜まりに好んで生息します。通常、甲殻は泥で被われているため、幼生を見つけだすことは困難です。彼らが残した泥の上の這い跡(平行な三本の線)を捜し、その跡の少し先に盛り上がった泥の小山(幼生)を捜すことが一番の早道です。

4.幼生はなぜ干潟の泥の中で生息しているのでしょうか ?

炎天下における干潟は気温の上昇が激しく、そこに棲む生物達は、何らかの防衛策を講じなければ、生活することができません。カブトガニの場合は、表層の少し下を活動の場としているため、夏の強い日差しから身を守るとともに、彼らの餌となる有機物やゴカイなどの環形動物も捕食することができます。泥中を活動するのは水鳥などの捕獲者に対し身を守るための有効な手段となっています。
カブトガニが生息するために最も必要な干潟
(写真はカブトガニが生息するために最も必要な干潟 )

5.カブトガニの天敵は何でしょうか ?

干潟には多くの海鳥がやってきますが、その中でも特にサギやカモメの類がカブトガニの天敵になるものと考えられています。また、産卵中の雌の体の下にウナギがもぐり込み、捕えて解剖したところ、体内から多くの卵が出てきたとの報告もあり、卵と幼生にとって、魚類も大敵の 1つと考えられています。成体になると、その大きさや堅牢な甲殻から全くの無敵と思われがちですが、腹側は以外に軟らかくこれを敵にさらせば、いかに親カブトガニといえど容易くやられてしまいます。
このように自然界におけるカブトガニの天敵も多くいますが、人為的な環境破壊をする人間がカブトガニにとって1番の天敵です。

6.カブトガニは臭いを感じることができますか?

カブトガニの複眼と単眼にテープをはって目隠しをし、彼らが砂中で休んでいる時に水槽の中へアサリの体液(アサリを剥き身にして絞り取った体液を海水と混ぜ合わせたもの)を入れた実験では集合に要した時間は個体によって多少差はあるものの餌を求める行動をおこします。これによってカブトガニは臭いに対して行動をとることが理解できます。

7.水槽内のカブトガ二に餌はいつやるのですか ?  また、カブトガニは餌をどのようにして食べますか ?

博物館では餌は 3日に1回か、もしくは餌を捜し求める行動をとる場合にその都度与えています。
普段のカブトガニは、砂の上を徘徊するか潜っているかのどちらかであり、捕食行動は徘徊中のみに見られます。しかし水槽内で飼育したカブトガニは餌の食べ方が変わったように感じられます。捕食の体勢は、まず体(甲殻)が砂と触れぬように、脚を伸ばして体を浮かせ、第 1~第 4歩脚を砂の中へつっこみ、まさぐります。砂以外のものがハサミに触れると、直ちにハサミで捕え口へと運びます。この動作が見られる時は、非常に腹を減らしている時のようです。

8.カブトガ二は気象変化を察知することができますか ?

残念なことに、これまでこういった研究はなされておらず、まったく分かっていません。
しかし、台風が原因で毎日産卵していたカブトガニが卵を産まなくなった事例もあります。予知能力ではありませんが、気圧の微妙な変化をとらえるある種の感覚機能が備わっているのかも知れません。カブトガニにこういった能力があると判断するならば、2億年も前から生きつづけてこられた理由もわかるような気がします。