○笠岡市子どもを虐待から守る条例

令和2年3月26日

条例第12号

目次

前文

第1章 総則(第1条~第7条)

第2章 未然防止(第8条~第11条)

第3章 早期発見及び早期対応(第12条~第14条)

第4章 指導及び支援(第15条~第17条)

第5章 体制及び機能の強化(第18条)

第6章 雑則(第19条・第20条)

附則

(前文)

子どもは未来への希望であり,一人の人間として,その尊厳が守られなければならない私たちにとってかけがえのない存在です。

しかし,保護者自らの経済的困窮,核家族化による社会的,精神的な孤立及び地域のつながりの希薄化等に伴って引き起こされる,家族や地域の養育能力の低下は,現代社会の大きな課題となっています。

子どもに対する虐待は,著しい人権の侵害であり,子どもの心身の成長及び人格の形成に重大な影響を与えるとともに,社会に重大な損失を与えるもので,決して許されるものではありません。

そのために私たちは,子どもの権利を守り,寄り添い,支える大きな役割を担わなければなりません。

笠岡市は,こうした認識の下,市民の方々の強い理解と協力を得て,子どもの出生前・出生後において切れ目のない支援体制を充実し,虐待の未然防止,早期発見及び早期対応,再発防止を図ります。さらに,虐待の連鎖を断つ適切な援助を行い,子どもが安心して健やかに成長することができるまち笠岡の実現を目指し,この条例を定めます。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は,子どもを虐待から守るための基本理念を定め,市,保護者,市民及び関係機関等の責務等を明らかにするとともに,虐待の未然防止及び早期発見,その他の虐待防止等に関し必要な事項を定めることにより,子どもを虐待から守る施策を総合的に推進し,もって子どもの権利が尊重され,健やかな成長が守られる社会を実現することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において,次の各号に掲げる用語の定義は,当該各号に定めるところによる。

(1) 子ども 児童虐待の防止等に関する法律(平成12年法律第82号。以下「法」という。)第2条に規定する児童をいう。

(2) 保護者 法第2条に規定する保護者をいう。

(3) 虐待 法第2条に規定する児童虐待をいう。

(4) 市民 市内に住所又は居所を有する者,市内に事務所又は事業所を有する個人及び法人その他の団体並びに市内に存する事務所又は事業所に勤務する者をいう。

(5) 関係機関等 学校,幼稚園その他教育施設,保育所,認定こども園その他児童福祉施設,医療機関,特定非営利活動法人その他子どもの福祉又は配偶者からの暴力の防止に業務上関係のある団体並びに民生委員,主任児童委員,愛育委員,栄養委員,その他子どもの福祉又は配偶者からの暴力の防止に職務上関係のある者をいう。

(6) 通告 法第6条第1項に規定する通告をいう。

(基本理念)

第3条 虐待は,決して正当化されることのない重大な人権侵害であり,子どもの心身の成長及び人格の形成に重大な影響を与えるとともに,将来にわたって子どもを苦しめ,ひいては子どもを死に至らしめるおそれがあり,決してこれを行ってはならない。

2 子どもを虐待から守る施策は,子どもの最善の利益に配慮するとともに,子どもの安全を最優先に考えたものでなければならない。

3 何人も,虐待を見逃さないよう努めるとともに,虐待のないまちづくりを推進し,子どもの安全及び健やかな成長が守られる社会の実現に努めなければならない。

(市の責務)

第4条 市は,虐待の対応に当たっては,児童相談所及び関係機関等と連携し,虐待を受けた子どもの安全を確保し,生命を守ることを最も優先しなければならない。

2 市は,虐待を防止するため,出生前から切れ目のない支援を受けられる体制の充実を図るとともに,虐待に係る相談がしやすい環境づくりに努めなければならない。

3 市は,子どもを虐待から守り,虐待のないまちづくりを推進するため,子育て家庭が孤立することのない地域社会の形成に向けた活動に対し必要な支援を行うものとする。

4 市は,虐待の未然防止及び早期発見に向け,関係機関等の人材の育成を図るため,専門的な知識及び技術の習得に関する研修を行うものとする。

5 市は,児童相談所,警察署及び関係機関等との連携を強化するため,笠岡市要保護児童対策地域要対協(児童福祉法(昭和22年法律第164号)第25条の2第1項の規定により設置した要保護児童対策地域協議会をいう。以下「要対協」という。)の円滑な運営の確保及び協議の活性化を図るものとする。

(保護者の責務)

第5条 保護者は,子育てに関する知識の習得に努め,虐待を決して行ってはならず,子どものしつけに際して,その健やかな成長を阻害するような著しい身体的又は精神的な苦痛を与えてはならない。

2 保護者は,自らが子育てについて第一義的責任を有するものとして,子どもに愛情をもって接するとともに,虐待が子どもの心身の健やかな成長及び人格の形成に重大な影響を与えることを深く認識し,子どもの自主性及び自発性を育む健全な養育に努めなければならない。

3 保護者は,市及び児童相談所が行う子どもの安全の確認及び安全の確保に協力しなければならない。

4 保護者は,子育てに関して,市,児童相談所又は関係機関等による指導,助言その他の支援を受けた場合は,必要な改善等を行わなければならない。

(市民の役割)

第6条 市民は,第3条の基本理念を理解し,虐待を防止するよう努めるものとする。

2 市民は,子育てに係る保護者の負担を理解し,地域において子ども及び保護者への日常的な見守りや声掛け等を通じて関わりを深め,子育て家庭が地域社会から孤立することのないよう努めるものとする。

3 市民は,市及び児童相談所が行う子どもの安全の確認及び安全の確保に協力するよう努めるものとする。

(関係機関等の役割)

第7条 関係機関等は,虐待の未然防止及び早期発見に努めるものとする。

2 関係機関等は,子どもを虐待から守るため,市が実施する虐待の防止に関する施策に協力するとともに,互いに連携するよう努めるものとする。

3 関係機関等は,市及び児童相談所が行う子どもの安全の確認及び安全の確保に協力するよう努めるものとする。

第2章 未然防止

(妊娠期からの支援)

第8条 市は,妊娠期から切れ目のない支援を行うため,笠岡市子育て世代包括支援センターを活用した支援を行うとともに,児童福祉法第6条の3第4項の規定による出産後の乳児家庭全戸訪問,児童福祉法第6条の3第5項の規定による養育支援訪問及び母子保健法(昭和40年法律第141号)第12条第1項の規定による乳幼児健康診査等を通して,養育支援の必要な家庭については,関係機関等と連携し,虐待の未然防止に向けた支援を行うものとする。

(虐待の未然防止)

第9条 市は,虐待の未然防止のため,良好な親子関係が築けるように,しつけの方法について,保護者及び関係機関等に情報提供や相談を行うとともに,保護者支援プログラム等を学ぶ機会を設け,専門的な知識及び技術の提供等,必要な支援を行うものとする。

(市民等との連携)

第10条 市は,市民及び関係機関等と連携し,子育てに関する支援施策の充実を図るなど,安心して子育てができる環境の整備に努めなければならない。

(虐待防止の啓発)

第11条 市民の間に,広く子どもを虐待から守ることについての関心及び理解を深めるため,児童虐待防止推進月間を設ける。

2 児童虐待防止推進月間は,毎年11月とする。

3 市は,児童虐待防止推進月間において,関係機関等その他虐待の防止等に関係する機関,団体等と連携し,その趣旨にふさわしい事業を実施するよう努めるものとする。

第3章 早期発見及び早期対応

(情報共有)

第12条 市は,虐待の早期発見及び早期対応のため,関係機関等相互において虐待に関する情報を迅速に共有できるよう調整に努めなければならない。

(通告及び相談に係る対応等)

第13条 何人も虐待が子どもの生命及び人権に関わる事象であることに鑑み,虐待を受けたと思われる子どもを発見した場合は,速やかに市又は児童相談所に通告しなければならない。

2 市は,通告があった場合は,直ちに調査を行い,必要があると認めるときは,子どもの安全の確認及び確保を行わなければならない。虐待に係る相談があった場合及び他の市区町村又は児童相談所から虐待に係る引継ぎを受けた場合も,同様とする。

3 市は,通告を受け,虐待があると認められるときは,必要に応じてその情報を速やかに児童相談所に提供し,連携を図らなければならない。

4 市は,児童相談所及び警察署と連携し,通告及び虐待に係る相談に常時対応することができる体制を整備するよう努めなければならない。

5 市は,必要があると認めるときは,笠岡市児童緊急ショートステイ養育協力施設事業等を利用して,施設において一時的な預かりを行い,子どもの安全の確保を図るものとする。

6 市は,通告又は虐待に係る相談をした者が特定されないよう留意しなければならない。

(転出等をする場合の措置)

第14条 市は,虐待を受け,又は受けるおそれのある子ども及びその保護者に対する支援中,これらの者が転出(住民基本台帳法(昭和42年法律第81号)第24条に規定する転出をいう。)をする場合若しくはその事実が判明した場合は,支援が途切れることのないよう転出先の市区町村へ必要な情報を引き継ぐものとする。

第4章 指導及び支援

(子どもに対する支援)

第15条 市は,児童相談所及び関係機関等と連携し,虐待を受けた子どもに対し,健やかな成長及び発達のため,必要な支援を行うものとする。

(子どもの家庭復帰及び自立に係る支援)

第16条 市は,児童相談所及び関係機関等と連携し,施設入所等の措置又は一時保護の解除がなされた子どもの家庭復帰及び自立に当たって,必要な支援を継続して行うものとする。

(保護者に対する指導及び支援)

第17条 市は,児童相談所及び関係機関等と連携し,虐待を受けた子どもが良好な家庭環境で生活することができるよう,その保護者に対して,必要な指導及び支援を行うものとする。

第5章 体制及び機能の強化

(要対協の取組)

第18条 要対協は,子どもを虐待から守るため,構成する者がそれぞれ保有する虐待に関する情報を共有し,緊密な連携を図るものとする。

第6章 雑則

(財政上の措置)

第19条 市は,子どもを虐待から守る施策を実施するために必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

(委任)

第20条 この条例に定めるもののほか,この条例の施行に関し必要な事項は,市長が別に定める。

この条例は,令和2年4月1日から施行する。

笠岡市子どもを虐待から守る条例

令和2年3月26日 条例第12号

(令和2年4月1日施行)